2012年9月5日水曜日

爆笑文化比較論(4)ブリテン諸島の民族流入


話をイギリスの方に移しますとこちらも最近の遺伝子研究で本来信じられていたイギリス人のルーツとは随分違うという事が判ってきております。

ブリテン諸島には元々ネアンデルタール人が生息していたらしいのですが、彼らはどうやら氷河期が訪れた頃に死に絶えたか暖かい場所へ移住したかで氷河期のほぼ4000年に渡り人類は生息していなかったとされています。

ネアンデルタール人の子供

最後の氷河期が終わる辺りの約16,000年前から約7,500年にまずイベリア半島からバスク人が流入しています。そしてかのケルト系の民族が流入してきたのは約6,000年〜3,700年前。ローマ人が来る以前のブリテン諸島においてはこのケルト人こそ日本でいう「縄文人」にあたる(のかな?)位に文化、言語、遺伝子的にも支配的と考えられていましたが、最近の研究では実はイングランドとスコットランドでは10%未満と遺伝子的には従来信じられてきた程大きな割合を占めていない事が判ってきています。

しかも文化、言語的に最もケルト色が強く、或る意味それが故にアングロサクソン系のイングランドとケルト人としての文化と誇りを守る為に抗争を続けてきたアイルランド人が実は遺伝子的にはイングランド人よりもケルト人の割合が低いという実に皮肉な事実も判明しているのです!

ケルト系ピクト人の女性

またこれまではサクソン人が英語の母体となる言語をもたらしたとされていましたが、新説では実は英語の母体はサクソン人ではなく、ケルト人とローマ人の渡来の間(若しくはローマ軍の支配下の時)に現在のベルギー辺りからやってきたとされるサクソン系のベルガエ人という人達の話していた言語だとも言われ始めています。

この頃は平行して北欧からもサクソン系の人種がブリテン諸島にやってきており、この人達の喋っていた言語もベルガエ人のそれと大きくは異なっていなかったのではないかと推測されています。

その後イエス・キリストが昇天して10年も経たない西暦40年頃。常春の地中海よりローマ人がわざわざドーバー海峡を渡り一年中天気の悪いブリテン島までやってきて今のイングランドにあたる部分を約400年に渡りほぼ制圧、支配する訳ですが、上記の新説が本当であれば既にこの時点で先住民族は既に古代英語のような言語を話していた可能性もあるという事になります。

いずれにせよ日本に弥生人が渡来した時の縄文人と同じようにこの時期に先住民族はローマ人によってブリテン諸島の隅の方に追いやられていきます。

遺伝子には大きく反映されてはいないもののケルトの言語や文化はスコットランドやウェールズ、アイルランド、そしてイングランドの南西といった方面に色濃く残っているという事からも「ケルト人」という概念は遺伝や血統といった人種的なものよりむしろ(少なくともブリテン諸島においては)文化や言語を指すものといってもいいのが現状のようですね。

そして4世紀、従来は今日実質的世界の共通言語の役割を果たしている英語の母体を本州とほぼ面積が同じであるブリテン島に持ち込んだと思われていたアングロサクソン人がやってきた訳で、これまではこのアングロ・サクソンこそが現在に至るまで平均的イギリス人の遺伝子構成の中では最大のグループと思われており、白人のイングランド人も大部分が自分達はアングロサクソンの子孫だ、というアイデンティティーで生きてきたと思うのです。

アングロサクソン人のヘルメット - 7世紀頃

しかし実はアングロサクソン人の遺伝子というのはイギリス人の5%程度にすぎないという結構衝撃的な事実が最近判明しているのです!そうなると南北アメリカを「ラテン・アメリカ/アングロ・アメリカ」という風に分けるのも問題になってきますし、こういった地理用語や歴史用語の見直しも必要に迫られる日が来るかもしれません......

いずれにせよこれまでのイギリス=アングロサクソン&ケルトという図式は少なくとも遺伝子的には正しくなく、平均的コーカソイド系イギリス人の遺伝子グループで最大を占めるのはむしろ氷河期が終わってすぐやってきたイベリア半島系のバスク人及び北イングランドからスコットランドにかけてを略奪しまくったスカンジナビア出身のヴァイキングの中で結局居座っちゃった人達なのです。

更にその後ブリテン諸島のみならず英語という言語のその後の運命を決定付ける事件が起きます.....

1066年 - 日本で言えば1600年にあたる、イギリス人なら誰でも知っているこの年に英国版関ヶ原の戦い -「ヘイスティングスの戦い (Battle of Hastings)」があります。これでなんと多数派の先住民族はフランスから来た僅か6000人程のノルマン人に敗北を喫し、完全に支配されることとなります。

ヘイスティングスの戦いの様子

この支配者ノルマン人の喋っていた1000年位前のフランス語がこれまた英語に多大なる影響を与えていて、当時の階級社会の名残りが現在話されている英語にも如実に残っているのです。

例えば家畜と食肉の名詞を例にとってみましょう:


牛 = ox, cow
牛肉 = beef

豚 = pig
豚肉 = pork

鶏 = hen, cock
鶏肉 = poultry


これら単語の語源を遡ると家畜の段階での名詞(cow, big, hen等)は全てアングロ・サクソン人の古代英語、そして卓上の皿の上に乗っている調理された肉(beef, pork, poultry)はノルマン人の古代フランス語、つまり家畜を育てる被支配階級(アングロ・サクソン人)と彼らが育てた肉を食べる支配者(ノルマン人)という1000年近く前の社会構造がくっきり残っているのです!

更に加えると司法用語なんかもほとんどがノルマン語が語源となっています。

この辺の「ハイブリッドな多重構造言語 - 英語そして日本語」というテーマは掘り下げはじめるとこれまた大変長い話になってしまうのでまた別の機会に譲りますね(汗)。

いずれにせよ言語学的に英語はインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派に属する訳ですが、喋っている人達の遺伝子はもちろんベースとなっている筈の文化や言語体系も異なっている、それはつまり先住民族が次にきた侵略者によって言葉や文化を放棄させられる事が繰り返された歴史の象徴とも言えるのです。

こうして比べると前回のブログで言及した民族流入の歴史が日本語に残していった跡と比べて、英語という言語にはより過酷な侵略に晒されて現在に至るという歴史がくっきりと刻まれているのです。

そしてこれが両者の精神文化そして今回のテーマ「笑い」にどう影響したのかについての暴論を次回は展開させて頂きます〜!

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