2012年10月13日土曜日

損をして得を取れ - 往年のJ-バンドは何故リバイバルしないのか?

昨今、ビートルズのMagical Mystery TourがiTunesで発売されたという事でにわかにBeatles熱が上昇しております。

そもそもこの作品が最初に本国英国のBBCで放送されたのは1967年(昭和42年)のクリスマスの翌日(この日を英国ではBoxing Dayと言います - 筆者がこの世に生を受けて23日後!)。


翌日の新聞では「視聴者を金で操ったビートルズ」等々叩かれまくり、「世紀の大失敗作」の烙印を押されたあの作品を45年経った今ここまでプッシュするのも「もうBeatlesブランドなら何でもいいんかい!」って気もしますが、音楽シーンとか新たに編集されているらしいので悔しいけれどかすかな期待を抱かずにはいられません......

「ビートルズ商法」と呼んでも差し支えないそんなプロモーション・メソッドですが、このような感じでストーンズやツェッペリン、プレスリーといった往年の音楽遺産が毎年リサイクルされているのが英米における音楽産業の現状です。

ところが!往年の日本のバンドとなると今流行っている若手のミュージシャンがインタビューで影響を受けた人とかリスペクトするバンドとかでいくらネーム・ドロッピングをしてもムーブメントと呼べる程にはリバイバルが盛り上がったためしがありません.....

何故なのでしょう?

昨年まで赤坂にある某テレビ局のBSで所謂懐メロ/クラシック・ロックの番組のディレクターをしていたのですが、そこで気付いた事が一つありました。

例えばビートルズとかクイーンみたいな所謂「大物ミュージシャン(笑)」の特集を組むとします。プロモ・ビデオやライブ映像の使用許可をレコード・レーベルに申請すると「60秒以内」とか「編集は禁止」といった諸々の条件こそありますが大抵は無料、もしくは予算内に収まる使用料で使えるので非常に企画しやすかったのです。

しかし邦楽となると........

.........例えば70年代に一斉を風靡し、全盛期にはオリコンチャートで一年の内半分ナンバー・ワンの座に君臨していた某女性二人組アイドルなんて映像はおろか、ジャケットを画面上で見せるだけで事務所に百万単位のお金を払え、と言われるのです.........

(洋楽の場合、大抵肖像権はレーベルとの交渉となりますが、邦楽は事務所なんですね〜)

こんな条件では予算内で番組を制作するのは不可能ですから企画段階でポシャる - つまりこれら過去の音楽資産が人々の目や耳に触れられる機会、即ちプロモーション・チャンスが権利を持っている事務所が目先の利益を追求した結果、単純に失われる訳です.......

この辺は事務所によって多少温度差はあるとはいえ、日本においては基本プロモーションで映像素材を見せるというコンセプトは皆無。あくまでも肖像権でお金を儲けたいみたいなのです。

試食は一切お断り、パッケージと能書きだけを見て買え!って事ですね。

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ちょっと話は変わりますが、数年前に話題になった「FREE」って本を御存知ですか?

この本の序章でモンティ・パイソンがYouTubeで過去のコンテンツの多くを高画質で配信した際のエピソードが書かれています。

YouTubeのモンティ・パイソン・ページには以下の文が寄せられています:

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For 7 years you YouTubers have been ripping us off, taking tens of thousands of our videos and putting them on YouTube. Now the tables are turned. It's time for us to take matters into our own hands.
七年もの間YouTubeの住人どもは俺達を搾取し続け、俺達のビデオを何千もYouTubeに無許可でアップし続けてきた。だがそんな時代は終わった。これからは俺達が主導権を掌握する時がやってきたのだ。
We know who you are, we know where you live and we could come after you in ways too horrible to tell. But being the extraordinarily nice chaps we are, we've figured a better way to get our own back: We've launched our own Monty Python channel on YouTube.
お前らが誰かも、どこに住んでいるかも知っている。口では言えないような恐ろしいやり方でお前らを追いつめる事だって出来る。だが俺達はアリエナイ位よく出来た人間の集まりだ、だからもっと効果的な方法で復讐したいと思う。だからYouTubeにモンティ・パイソン・チャンネルを自分達で作る事にしたんだ
No more of those crap quality videos you've been posting. We're giving you the real thing - HQ videos delivered straight from our vault.
お前らがアップしていたクソみたいな低画質のビデオともおさらばだ。俺達は本物を提供する!蔵出しのハイ・ビジョンのビデオさ。
What's more, we're taking our most viewed clips and uploading brand new HQ versions. And what's even more, we're letting you see absolutely everything for free. So there!
更にこれまで最も人気のあった作品ばかりを優先的にハイ・ビジョンで上げていく。もっと凄いのはこれを全部完全に無料で視聴させてあげるって事だ。どうだい
But we want something in return.
その代わりにお願いがある。
None of your driveling, mindless comments. Instead, we want you to click on the links, buy our movies & TV shows and soften our pain and disgust at being ripped off all these years.
無意味で下らないコメントとかいちいち書かなくてもいいからリンクをクリックして映画やテレビのDVDを買って少しでも俺達の苦悩やこれまで何年もの間搾取されてきた怒りを癒して欲しい........

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この結果、モンティ・パイソンのDVDの売上は2万3000倍にも上がったのです!

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今日のインターネットにおいては音楽や映像は金払うものじゃない、と考えているユーザーが大多数だと思います。

これは好む好まざるに関わらず受け入れざるを得ない毅然たる現実。

それは確かに従来のビジネス・モデルで利益を生み出し続けようとする人達に取っては容認し難い状況ではあると思いますし、それが故に今月の頭より(単なるYouTube閲覧も含まれる)違法ダウンロードに対して刑罰を適用したりしてプレッシャーをかけたくもなるのでしょう。

但しこの著作権法"改正"の裏には隠されたもっと危険な意図が別にあると思いますけどね

事実、AV◯X TRAXのようなレーベルのHPではアクセスするといきなり:

WARNING!
違法にアップロードされたと知りながら
音楽や映像をダウンロードするのは法律違反です!

という警告文が登場します.......


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例えば本屋が二件あったとします。

一件目は店内に入った途端、店員に有無を言わさずこう言われます:

万引きは犯罪ですからね!

もう一件では店員はこう言います:

どうぞ好きなだけ立ち読みして下さい。
そしてもし気に入った本があったら買って下さいね!



貴方ならどちらの本屋で本を買いますか?

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発想を転換する事、或はもっと理想主義的言い方をすれば人間の良心を少しだけでも信じてあげる事で逆境をビジネス・チャンスに変える事だって可能なのです!

そもそも肖像権や著作権を死守する事に拘ってコンテンツをお蔵入りにしたままにして一切人の目に触れる事が無ければ文字通り宝の持ち腐れ。本格的なリバイバルなんてほぼ不可能です。

英国のビートルズやクイーン、米国のプレスリーやカーペンターズがリバイバルを繰り返している裏にはそんな音楽業界の発想の転換があると思います。

逆に60年代のGSや70年代のニュー・ミュージックとか日本語で歌われている音楽であるにも関わらず日本国内ですら同じような規模のリバイバルをしない理由も正にそこにあると思うのです.......

ゴダイゴとか久保田早紀とか原田真二とかの70年代の作品は今聴いても素晴らしいと思いますし、ビートルズみたいにもっと普通に色々なところで目や耳に出来たらステキだろうな〜って思いますけどねぇ.......

 (久保田早紀/異邦人)

判ってはいても崖っぷちに追い込まれる迄は今迄のやり方を変える事は出来ない

江戸時代末期然り、大東亜戦争然り、永遠に学ぶ事を潔しとしない倭民族の本能的行動なのかもしれませんね.......

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