2012年9月18日火曜日

(恋と)全面戦争はちょっとしたきっかけから....(前編)

日本人が初めて体験した無差別爆撃大東亜戦争末期の1944年頃より始まった「空飛ぶ要塞」B29爆撃機によるものだと思われていらっしゃる方は多いでしょう。

神戸市を爆撃するB29

ミリヲタの方だったら即「いや日本における最初の無差別爆撃は開戦直後の1942年、B25によるドゥーリットル空襲だ」と言われるかもしれません。

空母ホーネットから飛び立つB25爆撃機

実は!日本で最初の市街地への無差別爆撃はそれらより遥かに遡って1863年、前年の生麦事件に端を発した薩英戦争で英国海軍が鹿児島市に対して行った砲撃なのです。

鹿児島市を砲撃する英艦隊

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前置きは長くなりましたが、こんなヲタッキーなトリビアが今回のブログのテーマではありません(汗)!

そもそもこの薩英戦争のきっかけとなったのは「大名行列の真ん中に馬で飛び込んだ」という理由で薩摩藩士によってイギリス人が一名殺害され二名が重傷を負った、かの「生麦事件」が起こった際、当時のイギリス政府が薩摩藩に対し送りつけた要求文。

薩摩藩士に斬りつけられる英商人リチャードソン

この中にあった:


"......hand over the person responsible....."
(直訳:(事件の)責任者を引き渡すよう.....)


という一文で薩摩藩が文字通り真っ青に.......

........というのもこの時の通訳、福澤諭吉がこの「責任者」というのを「藩主」と訳したからのです.......

「そんな要求は当然受け入れられない!」

という事で薩摩藩、つまり現在の鹿児島県は当時地球の地表の4分の1を支配していた「陽の沈む事なき」世界最大・最強の大英帝国との戦争に突入してしまうのです.....

イケメン諭吉、サンフランシスコにて地元の可愛い娘と2ショット

英国側が言いたかったのは「責任者」つまり「(実際に斬った)犯人」を引き渡せ、という事だったのですが、(当時の)日本人、福澤諭吉の感覚だと責任者=当事者/担当者ではなく、責任者=藩主/社長となってしまうのですね。

今日の日本における大きな過失があった際の対処の仕方を見ていると、この辺の感覚は今も昔も実はさほど変わっていないのではないような気もします.......

いずれにしても日本史上初の市民/市街地への無差別爆撃は......

"responsible"

......というたった一語の誤訳/解釈の違いによって起こったのです!

(自分も含めて翻訳を生業とする者はこのエピソード、肝に銘じておきたいところです...)


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話は変わりますが、現在イスラム教圏でもの凄い反米デモの嵐が吹き荒れており、既にリビアの駐アメリカ大使が殺害されるに至って、かなり深刻な国際問題に発展していますが、一応この一連の騒ぎのきっかけになったとされているのはインターネットにアップされたこの一本のビデオなのです:

予言者ムハンマドをネタにした映画 "Innocence of Muslims"

ご覧になればお判りの通り、実にチープな作りで殆どコメディ映画と言っても差し支えない見た目......

なのでイスラム教の信仰に触れた事のない人間にとってこんなショボいビデオが原因で大使が殺害されるなんてにわか信じ難いのではないでしょうか?

しかし実際に、少なくともこのビデオが口実として使われ、もの凄い怒りと憎しみの連鎖反応が生まれ、暴力的デモンストレーションがイスラム教圏で今も連日行われている事は事実なのです。

パキスタン・ペシャーワル市でアメリカ国旗を焼くイスラム教神学生ISOの生徒達

サラエボでの一発の銃弾から東京都23区と大阪市、横浜市の総人口を足したのよりやや多い1,600万人が戦死した第一次世界大戦が起こったように、恋、炉心溶触、そして全面戦争はいずれもちょっとしたきっかけから一気に連鎖反応が起こり事象が指数関数的に増大、気がついたら手遅れになっている、という摩訶不思議な性質をもっているものなのであります........

そのような歴史、若しくは経験値から我々人間が何かを学べるのだとしたら、人間とはたとえ理性を極限まで鍛錬したところで本質的にはいつまで経っても「動物」であるという事だと思うのです。

(人間も含めた)脊椎動物及び節足動物は縄張り意識が本能として備わっています。

人間という動物はこの本能を未完成の理性で半ば強引に正当化しようとする結果、自分達には手に負えない、本当は誰も望んでいなかった結末を引き起こしてしまうのではないでしょうか?

禅問答ではないですが、自分達はそもそも自分達の事を全く理解していないという毅然たる事実をまず理解し受け入れる事が人類全体がもう一次元上にステップ・アップする為の第一歩のような気がする今日このごろ......

そんな流れで後編は昨今ホットな話題を提供してくれている竹島/独島、尖閣諸島/魚釣島について暴論を述べさせて頂きます......

5 件のコメント:

  1. サーシャ コーエンの「ディクテーター」は許されるのに、何故このチープビデオが許されないのか?永遠の謎です。

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  2. そうですね..... 個人的にはこのビデオは単なるきっかけでこれまで積もり積もっていたアメリカに対する怒りが一気に爆発したのだと思います。本日流出したロムニーの失言なんて正にある意味的を得てると思います。

    http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-19637631

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  3. この人ってなんか一言多いんですよね。モルモンの人って基本的に謙虚で穏やかだと思うんですが、ロムニーは典型的なお山の大将っぽい。

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