2012年9月14日金曜日

人類最後の日?

今回は日本が輩出した二大天才アニメーターによる最終戦争後に再構築された「理想郷」の解釈を通じて日本人の世代による「理想」の差、或は「理想」そのものの有無に関する仮説を展開してみたいと思います!

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宮崎駿監督の「未来少年コナン」では2008年に最終戦争が勃発し、核兵器を遥かに上回る「超磁力兵器」で人類はほぼ滅亡してしまいます。

超磁力兵器 - 地軸がねじ曲がり、地核が破壊され、大陸がことごとく海に沈んでしまう

対して庵野秀明監督の「新世紀ヱヴァンゲリヲン」では2000年9月13日にやはり核兵器を凌ぐ「セカンドインパクト」で人類が滅亡の危機に瀕します。


セカンドインパクト - 秘密結社ゼーレが偽装した隕石衝突

これがこの宮崎駿と庵野秀明という日本アニメ界が生んだ天才二人によるSF2作品の現代文明崩壊のシナリオなのですが、両者に共通しているのはいずれも核兵器を凌ぐ新兵器によって地球自体の地軸や地殻が壊されて地表の様子が完全に変わってしまうという点です。

しかしそれ以上に興味深いのは共通していない点、つまり最終戦争後の世界の解釈の差とでも申しましょうか....



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宮崎駿のコナンでは二つの対立する勢力 - 「ハイハーバー」と「インダストリア」- という国家/コミュニティーが出来ています。インダストリアは文字通り工業的で既に階級制度が徹底しており重苦しい空気に満ちた場所。そしてハイハーバーは産業革命以前のヨーロッパの田舎のような場所で、ここが物語の中では理想郷的な位置付けとなっています。


ヨーロピアンな雰囲気漂うハイハーバー

庵野秀明のエヴァでは「使途」と呼ばれる敵の攻撃に晒される、街並は90年代の東京そのものの第三新東京市という場所が物語の舞台となっています。そこには70'sビンテージ・カーのアルピーヌ・ルノーA310が走ってるかと思えば、ローソンが普通にあり、中学生は学校の帰りにガリガリ君を食べ、大人はエビスビールを飲んだりしているのです。


通勤ラッシュの第三新東京市

多くの人が密かにこの世界を一度リセットして桃源郷というかアルカディアというか、所謂「地上の楽園」みたいなものを再構築してみたい、という夢を持っていたりするのではないでしょうか?

この2作品に登場する「ハイハーバー」と「第三新東京市」はある意味この2監督のそんな「ノアの箱船コンプレックス」を具現化したイメージだと思うのです(「未来少年コナン」は原作本がありますが、宮崎駿が原型をとどめない程自己流にアレンジしてしまっているのでイメージはほぼオリジナルと言って差し支えないかと......)。



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太平洋戦争開戦の年、1941年(昭和16年)に生まれた宮崎駿。

全共闘世代」 - 戦争の生々しい爪痕を目の当たりにしながら成長し、墨塗り教科書を手に取った戦後教育の申し子である事も相まって反戦思想が強い人達です。エンターテインメントといえば映画が中心、しかも日本では考えられない程の凄いセットで撮影されるアメリカ映画やおしゃれなフランス映画、そしてディズニーに代表されるテクニカラーのフルアニメーションなどを観て育っている為に海外への憧れも非常に強い世代であったといえるでしょう。そして日本の公害問題がピークの頃を若い頃に実体験しているだけに自然回帰、エコへの思い入れも強いのではないでしょうか。

そんな世代の宮崎監督にとって最終戦争を経てリセットした地球の理想像というのはエコで牧歌的、かつヨーロッパ的メルヘン溢れる世界 - ハイハーバー - そこには原点回帰を通じて本来の人間性を取り戻したいという監督の祈りのようなものが見え隠れしているような気がするのです。


ハイハーバー

それから約20年後、高度経済成長期の岩戸景気まっただ中の1960年(昭和35年)に生まれた庵野秀明。

物心ついた時からテレビも冷蔵庫もあり、衣食住に困る事も殆ど無くなった時代。ほぼ同世代のみうらじゅん(1958年/昭和33年生)が「不幸のない不幸」と呼んだほど、極度の貧困は勿論、戦争や大きな自然災害なども経験しなかった世代です。日本の子供向けエンターテインメントも充実し始め、国産アニメやウルトラマンといった実写ヒーローもの等を観て育った為に前の世代ほど海外への憧れは無くなってきています。学生運動も下火になり「しらけ世代」と呼ばれ、団塊の世代の様に現実の社会を変えるより、社会そのものをある種のフィクションとしてとらえる、斜めの見方をし始めた人達です。

そんな世代の庵野監督にとって最終戦争を経てリセットした地球の理想像というのはデジャヴ的現代社会 - 第三新東京市 - 「理想」というものの無責任さと潜在的危険性を見透かしてしまった者が一周まわってたどり着いた境地がこのパラレル・ワールドだったのではないでしょうか......


第三新東京市

勿論これは単に二人の世代の差だけではなく外向的な宮崎駿と内向的な庵野秀明との性格の違いも反映されているとは思いますが、いずれにしても育ってきた環境や社会的背景も全く無関係ではないか、と.........



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何はともあれ!2012年の今も地軸がひん曲がるような最終戦争が勃発していないのはとりあえず有り難い事ですねぇ〜!

1 件のコメント:

  1. コメントが入力出来ないとの事でご迷惑おかけしております。設定はコメント書き込み可にしているのですが、何なのでしょう???

    原因を何とか突き止めたいと思っておりますので今暫くお待ち下さい.......

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